Ⅰ 医療の質に関するもの
旭川赤十字病院における医療の質とクリニカルインディケーターについての考え方
医療の質が高いとはどのような医療を指すのであろうか?他の医療機関では治すことの出来ない疾患を治療できることは医療の質の高さの一つである。しかし、そのような疾患は多くはないし、病院内において行われる医療の一部にすぎない。病院の医療を考えるときには、病院全体の医療の質を論じる必要がある。この観点から考えたとき、私たちは質の高い医療を“患者の正当な期待に答えられる医療”と定義しました。すなわち、
治るべき疾患が確実に治って帰ることが出来る医療
- ・入院後に不要な感染症を起こさない
- ・医療に起因する合併症を起こさない
これが、質の高い医療の基本であると考えます。これを基にして、旭川赤十字病院の医療の質に関するクリニカルインディケーターを決めました。
クリニカルインディケーターを考えるとき、一般的には結果(outcome)、過程(process)、構造(structure)が評価項目として取り上げられます。医療の質を評価するクリニカルインディケーターは本来outcomeが適切ですがが、評価に値するデータを取ることが必ずしも容易ではないことからそのoutcomeを出すことに必要なprocessのみを取り上げてクリニカルインディケーターとすることもあります。しかし、旭川赤十字病院ではoutcomeにこだわり、outcomeとそのoutcomeを出すことに必要なprocessの両方をクリニカルインディケーターとしました。さらに、processが最終的にoutcomeに結びつくかどうかの検証も併せて行うこととしています。
院内感染症の発生防止に努めることは医療機関としての大きな責務です。この観点からクリニカルインディケーターとなるものを探しました。その第1が入院後肺炎です。入院後に肺炎を起こせば入院期間が伸びるのみならず、抗生剤に耐性のある細菌に感染すると生命に係わることも起こります。また、院内での感染患者が増え、抗菌薬の使用量が増加すると耐性菌の発生リスクも高くなります。そこで、旭川赤十字病院では入院後に発症する肺炎予防に取り組むことにしました。すべての入院後肺炎を検証することが最終目標ですが、第1歩として“SCUにおける入院後肺炎の発症”をクリニカルインディケーターとして選択しました。脳卒中により嚥下障害を来した人の誤嚥性肺炎は大きな問題です。顕性誤嚥のみならず不顕性誤嚥も問題となります。現在も、看護師による口腔ケアの他、歯科医および歯科衛生士が積極的に関与し、SCUでの入院後肺炎の発症率を更に下げようという取り組みを行っています。
結果
2025年度 | |||||
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4-6月 | 7-9月 | 10-12月 | 1-3月 | 2025年度 | |
入院後肺炎発症率 | 2.91% |
2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |
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入院後肺炎発生率 | 0.91% | 1.22% | 0.74% |
2011年度の試行にて歯科医(衛生士)による口腔ケアが入院後肺炎の発生率低下に有効であるとの感触を得ました。それと同時に、当初予想していた以上に入院後肺炎発生率が低いこともわかりました。これは以前より看護スタッフにより口腔ケアを実施していたことが関係していると考えています。また、歯科医(衛生士)による口腔ケアによる口腔ケアの実施には労力を要します。その労力と効果を考えたとき、全例に施行することは必要がないとも考えられました。そこで、2012年4月以降は、肺炎発生リスクが高いと考えられる患者さんに限定して歯科医(衛生士)による口腔ケアを実施することとしました。
現在は、ST(言語聴覚療法士)のみならず、摂食嚥下認定看護師などをはじめとして嚥下評価の訓練を受けた看護師も参加して行っています。職種は異なっても適切な評価と、適切な対応をとることで入院後肺炎発生率は低い値を維持しています。
入院後肺炎の診断は、全米院内感染サーベイランスシステム(National nosocominal infections Surveillance:NNIS)による院内肺炎の定義により行いました。
入院後肺炎と診断した患者数×100 / SCUに入院した全患者数
人工呼吸器関連肺炎(VAP)とは、人工呼吸器の装着が契機となって起こる肺炎です。 人工呼吸器を48時間以上装着した患者さんで発症が増えるとされ、VAPを発症した患者は状態が重篤となったり、ICUの入室期間が延長することが知られています。 人工呼吸器使用患者の管理を適切に行ったり、ICUにおける感染管理をより厳重に行うことでVAPを減らすことが出来るとされており、 ICUを持つ医療機関の医療の質を測る指標の一つとされています。 旭川赤十字病院では、ICU病棟において人工呼吸器を装着中の患者に対してVAPの発生数を調査し、発生率0%を維持していくように取り組んでいきます。
結果
2025年度 | ||||||
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4-6月 | 7-9月 | 10-12月 | 1-3月 | 2025年度 | ||
Outcome 2 | 件数 | 0件 | ||||
率 | 0.00% |
2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | ||
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Outcome 2 | 件数 | 0件 | 0件 | 0件 |
率 | 0.00% | 0.00% | 0.00% |
旭川赤十字病院ではVAPはありませんでした。
分子:ICU病棟での人工呼吸器装着患者でVAPを起こした患者数
分母:ICU病棟での人工呼吸器装着患者数
手術後の感染は手術の合併症として予測されるものの一つですが、全力をあげて防止すべきものでもあります。特に耐性菌による感染は難治となり、患者さんの期待を裏切る結果にもなりかねません。一方、術後に感染症を起こした場合に術後感染症かどうかの評価を行うことになりますが、その判定は必ずしも容易ではありません。当院では以前より消化器外科手術の術後創感染のサーベイランスを実施していますので、第1歩として術後創感染発症にoutcomeにはこのデータを用いることにしました。
結果
2025年(2022年から「年」で算出) | |||||
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1-3月 | 4-6月 | 7-9月 | 10-12月 | 2025年 | |
SSI 件数/総数 | |||||
SSI 発症率 |
SSI: Surgical Site Infection手術部位感染
2022年 | 2023年 | 2024年 | |
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SSI 件数/総数 | 27/388 | 41/435 | 43/562 |
SSI 発症率 | 6.96% | 9.43% | 7.65% |
対象手術:当院消化器外科の手術症例で緊急手術以外のもの
計算式:手術部位感染症例数 / 対象となる手術総数
当院では以前より消化器外科の手術症例に関してSSIサーベイランスを実施しておりました。SSI発生は待機手術と緊急手術では異なります。特に緊急手術では消化管穿孔などすでに感染を起こしやすい状況になっている手術も含まれます。そこで、我々が取り上げたクリニカルインディケーターは待機手術のみとしました。
病院内での歩行中の転倒やベッドからの転落事故が問題となっています。病院内では、病気の影響や使用している薬剤の影響もあり自宅にいる時以上に転倒転落のリスクが高くなります。時には転倒転落により骨折や頭蓋内出血などを来すこともあります。旭川赤十字病院では転倒転落事故防止に取り組んで来ていますが、高齢で足腰の不安定な人も多く入院してきますので歩行中の転倒やベッドからの転落を100%防止することは難しいのが現状です。旭川赤十字病院では患者さんの状態に応じた対応策を講じると同時に病院内での転倒や転落が自宅にいるとき以上に起こりやすいことを患者さん本人に理解頂く取り組みを行っています。その一つが、転倒転落アセスメントの実施です。原則的には入院当日に行いますが、休日の緊急入院では翌日以降になる場合もあるため3日以内の実施率100%を目指して取り組んでいます。また、患者さん自身にも病院内では転倒のリスクが高いことを理解して頂くために入院時にDVDを視聴して頂き、啓蒙を行っています。
結果
2025年度 | |||||
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4-6月 | 7-9月 | 10-12月 | 1-3月 | 2025年度 | |
レベル3b以上の転倒転落事故 | 1件 | ||||
アセスメント実施率 | 100% | ||||
DVD視聴率 | 89.5% |
2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |
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レベル3b以上の転倒転落事故 | 5件 | 7件 | 3件 |
アセスメント実施率 | 100% | 100% | 100% |
DVD視聴率 | 93.7% | 91.3% | 89.0% |
アセスメント実施、DVD視聴と転倒転落を防止するための取り組みは従来通りに行われています。 背景には入院患者の高齢化が大きく影響しています。
事故件数:報告されたインシデントレポートを使用。転倒転落に分類されるレベル3b以上の件数。
アセスメント実施率:アセスメントを実施した入院患者数/入院患者総数
DVD視聴率: DVD視聴数 / DVD視聴可能な患者総数
*DVD視聴可能な患者総数:意識障害・高度の認知症・視力障害等の理由でDVD視聴ができない人及び繰り返し入院で過去にすでにDVDを視聴している人を除いた入院患者数。
*旭川赤十字病院では飯塚病院にて作成した転倒転落に関してのDVDを、床頭台のテレビにてVODで視聴できるようにしています。
中心静脈カテーテルは、長期の栄養管理を必要とする場合や複数の薬剤を持続的に投与する場合に必要となるものです。中心静脈にカテーテルを挿入する際には首や前胸部・鼠蹊部などに比較的太い針を太い静脈に刺入し、その針からカテーテルを静脈内に入れます。この際、近くにある動脈を傷つけて出血を起こしたり、肺に穴を開けて気胸を来す危険性があります。これらは出血、出血に伴う血腫(血液の塊)、気胸などを合併症と言います。現在のところ合併症を完全にゼロにすることは出来ませんが、適切な手技を行うことにより少なくすることは出来ます。旭川赤十字病院では、中心静脈カテーテル挿入術を安全かつ確実に実施するよう医師に研修を行うとともに、動脈穿刺、血腫、気胸などの合併症の発生件数を調査し手技が適切に行われているかを検証しています。
結果
2025年度 | ||||||
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4-6月 | 7-9月 | 10-12月 | 1-3月 | 2025年度 | ||
Outcome 5 | 件数 | 4件 | ||||
率 | 1.85% |
2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | ||
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Outcome 5 | 件数 | 6件 | 5件 | 12件 |
率 | 0.74% | 0.59% | 1.59% |
今後は他の医療機関との比較などを通してこの値が妥当なのかを判断していくことになります。
分子:中心静脈カテーテル挿入術に起因する合併症件数
分母:中心静脈カテーテル挿入件数
褥瘡は仙骨部や殿部、足踵部などの皮膚が長時間圧迫し続けたり、皮膚に摩擦やずれが起きたり、おむつなどで湿潤状態に曝されたりすることにより起こる皮膚及び皮下組織の損傷です。仙骨部、殿部、足踵部、側胸部、尾骨部に多くみられます。長期臥床を余儀なくされる人で多くみられますが、長時間の手術中に出来ることもあります。栄養状態が悪い場合にはより褥瘡発生リスクが高くなります。入院後に褥瘡が出来ないよう、自分で動くことが出来ない人に対しては頻回に体位交換を行うことが病院では行われています。また、手術中に褥瘡が出来ないよう圧迫を受ける部分を分散させる取り組みも行っています。入院後の褥瘡の発生率が低いことは看護レベルの高さの一つの指標となります。
結果
2025年度 | ||||||
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4-6月 | 7-9月 | 10-12月 | 1-3月 | 2025年度 | ||
新規褥瘡発生 | 件数 | 9件 | ||||
率 | 0.03% |
2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | ||
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新規褥瘡発生 | 件数 | 50件 | 52件 | 65件 |
率 | 0.04% | 0.04% | 0.04% |
当院の褥瘡発生率は、日本病院会が公開しているQIプロジェクトにおける褥瘡発生率での全病院の平均値以下の値でした。旭川赤十字病院では皮膚排泄ケア認定看護師による褥瘡発生予防の指導が各病棟に対して実施されており、褥瘡の新規発生予防に貢献していると考えています。
分子:調査期間における分母対象患者のうち、d2以上の褥瘡の院内新規発生患者数
包含
– 院内で新規発生の褥瘡(入院時刻より24時間経過後の褥瘡の発見または記録)
– 深さd2以上の褥瘡、深さ判定不能な褥瘡(DU)、深部組織損傷疑い
分母:入院延べ患者数
除外 下記患者の入院日数
– 日帰り入院患者(同日入退院患者も含む)
– 入院時にすでに褥瘡保有が記録(d1,d2,D3,D4,D5,DU)されていた患者*1
– 対象期間より前に褥瘡の院内発生(d1,d2,D3,D4,D5,DU)が確認され、継続して入院している患者*2
*1 院内での新規発生に限定
*2 すでに褥瘡が発生している患者を除き、対象期間内に院内新規発生の可能性がある患者に限定
肺梗塞はエコノミークラス症候群として知られているように、長時間座り続けたり臥床状態を続けることにより下肢の深部静脈内に血栓ができ、立ち上がったり歩き始めたときにその血栓が肺動脈に詰まって最悪の場合には突然死を来す疾患です。欧米では術後合併症として20年以上前から問題となっていましたが、日本人では頻度が低いとされてきました。しかし、近年日本人においても発症率が高くなり対応が求められています。
旭川赤十字病院では入院後に発症し治療を要した肺梗塞の発症件数をOutcome 4として取り上げました。肺梗塞は術後のみならす、入院後に起こる突然死の原因として防止に努めるべきものとの認識から入院後に発症し治療を要した肺梗塞のすべてを取り上げることにしました。術後の肺梗塞予防のガイドラインが関連学会から出されています。旭川赤十字病院では、リスク評価を行いリスクの高い手術症例に対してはウィズエアーによる下肢の間欠的圧迫法を積極的に行って来ました。
結果
2025年度 | |||||
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4-6月 | 7-9月 | 10-12月 | 1-3月 | 2025年度 | |
肺塞栓発生件数 (術後発症数) |
3件 (1件) |
2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |
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肺塞栓発生件数 (術後発症数) |
17件 (0件) |
18件 (4件) |
15件 (3件) |
旭川赤十字病院では長期臥床に伴う肺塞栓を防止するためのガイドラインを作成しそれに沿った運用を行っています。肺塞栓の発症率はありますが、積極的に検査で見つける努力をした結果であり、肺塞栓により重篤な状態に陥った人はいませんでした。予防的な対応が機能したために早期発見が出来たとかんがえています。
肺塞栓発生件数:病歴システムでの入院中病名で“肺塞栓症”“肺動脈血栓塞栓症”が記載されている症例中、入院後にこれらが発症した件数。
旭川赤十字病院はDPC対象病院となっております。在院日数が短縮することに伴い、十分に回復する前に退院してしまうことが問題視されています。実態を把握するための取り組みは、DPC対象病院として欠かすことが出来ません。実態を把握し、その要因を分析し、今後の改善に結びつけることを目的としてこのクリニカルインディケーターを設定しました。
結果
2025年度 | ||||||
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4-6月 | 7-9月 | 10-12月 | 1-3月 | 2025年度 | ||
退院24時間以内の 予期せぬER受診 |
件数 | 9件 | ||||
率 | 0.29% |
2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | ||
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退院24時間以内の 予期せぬER受診 |
件数 | 28件 | 17件 | 30件 |
率 | 0.23% | 0.14% | 0.24% |
これらの結果が多いのか少ないのかに関して、単年度だけで判断することは出来ません。また、他の病院のデータがなく比較することも出来ません。毎月、これらの症例の内容を検討していますが、少なくとも退院判断が早すぎたと考えられる例はありませんでした。
退院後24時間以内の予期せぬER受診件数:退院後24時間以内にERを受診した患者から、予約されていた患者を除外した数
退院後24時間以内の予期せぬER受診率:退院後24時間以内の予期せぬER受診件数/全退院患者数
(死亡退院を除く)
ER(救急外来)を受診し、診察・治療の結果入院の必要がないと判断され帰宅した患者さんが短時間のうちに再度ERを受診することがあります。最初の受診時の診察や治療が不十分であったり、回復が不十分であった可能性があります。再度受診してきた場合に外来診療のみで帰宅できることもありますが、時には入院治療が必要であったり緊急の手術が必要なこともあります。受診24時間以内のER再受診はゼロには出来ませんが、この件数が多い場合には診療の在り方を再検討する必要が出てきます。
結果
2025年度 | ||||||
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4-6月 | 7-9月 | 10-12月 | 1-3月 | 2025年度 | ||
Outcome 9 | 件数 | 10件 |
2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | ||
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Outcome 9 | 件数 | 52件 | 48件 | 46件 |
再受診後に入院となった症例も含まれていますのでこれで満足できるものではありません。一例一例検証し適切な救急診療が行われるよう対応していきます。
24時間以内の再手術を新たな指標として加えることにしました。手術を2回に分けて行う場合もありますが、24時間以内に行うことは通常はありません。24時間以内の再手術は最初の手術で何某かのトラブルがあり、それを解消するために行うものが大部分となります。再手術を必要とする理由はいくつかあって多くの手術を行っている医療機関ではこれをゼロにすることは難しいと言わざるを得ません。しかし、回避可能な再手術は行わないようにしたいと考えています。データをとると同時に、再手術の要因と妥当性に関しても検討していく予定です。
結果
2025年度 | ||||||
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4-6月 | 7-9月 | 10-12月 | 1-3月 | 2025年度 | ||
Outcome 10 | 率 | 0.26% | ||||
分子/分母 | 3/1165 |
2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | ||
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Outcome 10 | 率 | 0.39% | 0.32% | 0.31% |
分子/分母 | 21/5320 | 15/4654 | 15/4783 |
旭川赤十字病院での術後24時間以内の再手術は、内容の精査も行っていますが、安全管理上問題が認められたものはありませんでした。今後も検証作業を行っていく予定です。
分子:分母のうち、術後24時間以内に同一部位に対する予定外の手術を行った件数
分母:手術室で実施された手術件数(入院患者)
18歳以上の入院患者さんに対する身体拘束率となっています。患者さんの安全のためにも、完全に拘束を行わないことは出来ませんが、極力低い値になることが望ましいとされています。当院でも不必要な身体拘束を行わないように、日々対策を行っています。
結果
2025年度 | ||||||
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4-6月 | 7-9月 | 10-12月 | 1-3月 | 2025年度 | ||
Outcome 11 | 率 | 9.7% | ||||
分子/分母 | 3,444/35,428 |
2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | ||
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Outcome 11 | 率 | 24.8% | 23.6% | 9.7% |
分子/分母 | 35,731/144,151 | 32,580/138,261 | 14,045/144,508 |
当院では急性期疾患も多く診ているため、医療安全上拘束が必要になる場合がありますが、出来るだけ拘束をしない医療を心掛け、そのための活動も行っています。
分子:分母のうち(物理的)身体拘束を実施した患者延べ数
分母:18歳以上の入院患者延べ数
下記項目のうち1~9の項目に準拠する項目を物理的身体拘束と定義する。
《分子対象》
1.徘徊しないように、車椅子や椅子、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
2.転落しないように、ベッドに体幹四肢をひも等で縛る。
3.自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む。
4.点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等で縛る。
5.点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、または皮膚をかきむしらないように、手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。
6.車椅子からずり落ちたり、立ち上がったりしないように、Y字型拘束帯や腰ベルト、車椅子テーブルをつける。
7.立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるような椅子を使用する。
8.脱衣やおむつ外しを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。
9.他人への迷惑行為を防ぐために、ベッドなどに体幹や四肢をひも等で縛る
《分子対象外》
1.行動を落ち着かせるために、向神経薬を過剰に服用させる。
2.自分の意思であけることの出来ない居室等に隔離する。
Ⅱ 病院の運営に関するもの
病院の運営に関するクリニカルインディケーターは、多くの医療機関が病院運営の指標としてデータを取っている事項を項目として取り上げています。
病床稼働率は、何%が適切かということに関して正確な答えはありません。病院がどのような患者さんを取り扱っているのか? どれだけの職員が各病棟の業務にかかわっているのかといった人的要因により変わってきます。旭川赤十字病院の医療の特徴は救急入院が多いことです。予定入院が半数で4分の1が救急搬送からの入院、残りの4分の1が救急外来に歩いてきたり一般外来の受診当日に入院した患者でいずれも緊急入院と位置づけられます。緊急入院が多いと言うことは、それに合わせて空床を確保しておくことが必要となります。この点は予定入院が多い大学病院などとは大きく異なってきます。旭川赤十字病院では、85~90%程度が適切と考えています。
結果
2025年度 | |||||
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4-6月 | 7-9月 | 10-12月 | 1-3月 | 2025年度 | |
病床稼働率 | 87.1% |
2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |
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病床稼働率 | 28.9% | 82.0% | 88.9% |
急性期病院では、単に入院患者数を増やすのみならず新規の入院患者を増やす事が病院のactivityを示す指標となります。これからの急性期病院は新入院患者数を増やし、在院日数を短縮していくことが求められています。
結果
2025年度 | |||||
---|---|---|---|---|---|
4-6月 | 7-9月 | 10-12月 | 1-3月 | 2025年度 | |
新入院患者数 | 3,176人 |
2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |
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新入院患者数 | 12,517人 | 12,134人 | 12,898人 |
平均在院日数を短縮することが急性期病院に求められています。しかし、疾患(診断群)により入院期間は大きく異なっています。病院毎に診療科、取り扱い疾患の構成が異なりますので平均在院日数を医療機関同士比較することはあまり意味がありませんが、同じ医療機関ではその推移をみることは有用です。
結果
2025年度 | |||||
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4-6月 | 7-9月 | 10-12月 | 1-3月 | 2025年度 | |
平均在院日数 | 10.3日 |
2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |
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平均在院日数 | 11.3日 | 11.1日 | 10.8日 |
退院患者数は、その医療機関が取り扱った患者数を示す指標となります。
結果
2025年度 | |||||
---|---|---|---|---|---|
4-6月 | 7-9月 | 10-12月 | 1-3月 | 2025年度 | |
退院患者数 | 3,161人 |
2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |
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退院患者数 | 12,547人 | 12,132人 | 12,890人 |
死亡退院患者数は入院する患者の重症度が高ければ多くなります。従って、医療機関同士で単純に比較することは出来ません。
※死亡退院患者数=DPCで様式1に含まれる「救急患者として受け入れた患者が、処置室、手術室等において死亡した場合で、当該保険医療機関が救急医療を担う施設として確保することとされている専用病床に入院したものとみなされるもの(死亡時の1日分の入院料等を算定するもの)を除いた数
結果
2025年度 | |||||
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4-6月 | 7-9月 | 10-12月 | 1-3月 | 2025年度 | |
死亡退院患者 | 73人 |
2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |
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死亡退院患者 | 380人 | 383人 | 397人 |
外来患者数は500床以上の地域医療支援病院では適切な数に抑えることが求められています。
結果
2025年度 | |||||
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4-6月 | 7-9月 | 10-12月 | 1-3月 | 2025年度 | |
外来患者数(1日平均) | 827人 |
2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |
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外来患者数(1日平均) | 852人 | 823人 | 808人 |
紹介件数及び紹介率・割合は、その医療機関が地域(の医療機関)から信頼されていることのひとつの指標となります。
結果
2025年度 | |||||
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4-6月 | 7-9月 | 10-12月 | 1-3月 | 2025年度 | |
紹介件数(月平均) | 1,423件 | ||||
紹介割合 | 94.3% |
2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |
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紹介件数(月平均) | 1,256件 | 1,239件 | 1,359件 |
紹介率 | 91.9% | 97.1% | 98.7% |
紹介率 = (紹介初診患者の数 / 初診患者の数)×100
紹介割合 = ((紹介患者の数+救急患者の数) / 初診患者の数)×100
逆紹介数及び逆紹介率・割合は病院が、地域完結型医療を推進していることの指標として有用なものです。
※2022年度より逆紹介割合に算出方法を変更しました。
結果
2025年度 | |||||
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4-6月 | 7-9月 | 10-12月 | 1-3月 | 2025年度 | |
逆紹介件数(月平均) | 837件 | ||||
逆紹介割合 | 56.4‰ |
2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |
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逆紹介件数(月平均) | 791件 | 771件 | 833件 |
逆紹介率 | 52.2‰ | 53.0‰ | 58.0‰ |
逆紹介率 = (逆紹介患者の数 / 初診患者の数)×100
逆紹介割合 = (逆紹介患者の数 / (初診+再診患者の数))×1000(‰)
旭川赤十字病院は救命救急センターを有する救急医療に力を入れている病院です。また、ドクターヘリの基地病院ともなっています。可能な限り多くの救急患者を受け入れたいと考えていますが、救急に関係するスタッフの過重労働にも気を配ることが必要になっています。救急車搬入台数・ドクターヘリ患者受け入れ件数・ERからの入院患者数を増やすにはより多くのスタッフを確保することが必要と考えており病院としてはそのための努力を続けています。
※当院HPにある「道北ドクターヘリ運航実績」での当院搬送件数と「クリニカルインディケーター」でのドクターヘリ患者受け入れ件数の差は、クリニカルインディケーターではヘリ出動時における当院への救急車搬送数は除かれているため
結果
(月平均) | 2025年度 | ||||
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4-6月 | 7-9月 | 10-12月 | 1-3月 | 2025年度 | |
救急車搬入台数 | 341台 | ||||
ドクターヘリ患者受け入れ件数 | 13件 | ||||
ERからの入院患者数 | 302人 |
(月平均) | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 |
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救急車搬入台数 | 395台 | 401台 | 403台 |
ドクターヘリ患者受け入れ件数 | 11件 | 8件 | 8件 |
ERからの入院患者数 | 326人 | 314人 | 327人 |
手術件数は急性期病院のactivityを示す指標の一つです。より多くの手術を行うことがこれからの急性期病院には求められています。
結果
(月平均) | 2025年度 | ||||
---|---|---|---|---|---|
4-6月 | 7-9月 | 10-12月 | 1-3月 | 2025年度 | |
手術件数 | 388件 | ||||
手術件数(全身麻酔) | 270件 | ||||
カテーテル手術件数 | 65件 | ||||
内視鏡手術件数 | 130件 |
(月平均) | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 |
---|---|---|---|
手術件数 | 441件 | 395件 | 397件 |
手術件数(全身麻酔) | 272件 | 275件 | 280件 |
カテーテル手術件数 | 63件 | 68件 | 78件 |
内視鏡手術件数 | 111件 | 118件 | 137件 |
Ⅲ 職員に関するもの
病院は一つの企業体です。しかも、地域住民の健康を回復することを業務としています。職員自らが健康であることが求められます。職員の健康状態を把握することも病院としての役割と考えています。
(月平均) | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 |
---|---|---|---|---|
職員の健診受診率 | 100.0% | 100.0% | 100.0% | 100.0% |
職員健康診断における採血検査の実施率
採血実施数 ÷ 健診受診対象者数
喫煙は喫煙者自身にとって有害であるのみならず、受動喫煙により周囲の人の健康も害します。旭川赤十字病院では以前より全施設・敷地内禁煙を実施しています。しかし、職員の中には喫煙者がいます。喫煙は喫煙場所に配慮すれば社会的に容認されている行為ですので禁煙を強制することは出来ません。しかし、少しでも多くの職員に医療従事者としての自覚を持ってほしいと考えています。
(月平均) | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 |
---|---|---|---|---|
職員の喫煙率 | 10.3% | 9.5% | 9.6% | 9.4% |
職員健康診断におけるチェックシートで喫煙していると申告した職員数
喫煙職員数 ÷ 健診受診対象者数
インフルエンザは毎年冬になると流行する疾患です。病院は多くの患者さんが訪れる場所であり当然インフルエンザウィルスに暴露される危険性の高い所です。病院機能を正常に維持するためにも職員がインフルエンザに感染しないことが必要です。
(月平均) | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 |
---|---|---|---|---|
インフルエンザ予防接種率 | 96.7% | 95.9% | 90.9% | 89.8% |
各年10月1日現在職員数(長期不在者を除く)におけるワクチン接種者の割合
ワクチン接種者数 ÷ 全職員数
離職率は職場環境がよく、働きやすい職場であることの指標となります。医師については、大学医局の関係を理由に退職するケースが多いという特性を踏まえ除外しています。職場環境を整えることが離職率を低く出来ると考え旭川赤十字病院は努力しています。
(月平均) | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 |
---|---|---|---|---|
職員離職率 | 8.0% | 5.4% | 5.2% | 6.0% |
看護師離職率 | 8.7% | 7.5% | 7.6% | 6.5% |
※職員離職率には医師・看護師は含んでいません(医師・看護師以外の離職率となります)
全職員数に対する離職者数の割合(医師・看護師除く)
離職者数 ÷ 全職員数
2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |
---|---|---|---|---|
医療職(医師) | 26.9% | 32.6% | 28.3% | 32.6% |
医療職(医療技術職) | 66.7% | 75.0% | 50.0% | 66.7% |
医療職(看護師等) | 93.5% | 86.0% | 86.4% | 81.6% |
一般職(事務職等) | 81.8% | 75.0% | 81.8% | 83.3% |
全体 | 58.8% | 66.4% | 58.7% | 60.0% |
2021年度 (4月1日 現在) |
2022年度 (4月1日 現在) |
2023年度 (4月1日 現在) |
2024年度 (4月1日 現在) |
|
---|---|---|---|---|
医療職(医師) | 17.1% | 20.9% | 24.6% | 22.3% |
医療職(医療技術職) | 38.7% | 41.1% | 41.0% | 41.9% |
医療職(看護師等) | 88.7% | 88.7% | 88.0% | 87.4% |
一般職(事務職等) | 73.4%/td> | 76.2% | 76.7%/td> | 77.1% |
派遣職員 | – | – | – | – |
全体 | 69.7% | 71.3% | 70.4% | 70.0% |
2023年度 | 2024年度 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
男性 育児休暇取得率 |
女性 育児休暇取得率 |
男性 | 女性 | |||||
育児休暇取得数 | 年度内配偶者出産出産者 | 育児休暇取得率 | 育児休暇取得数 | 年度内出産者 | 育児休暇取得率 | |||
医療職(医師) | 25.0% | – | 3名 | 3名 | 100.0% | 1名 | 1名 | 100.0 |
医療職(医療技術職) | 75.0 | 100.0% | 5名 | 5名 | 100.0% | 0名 | 0名 | – |
医療職(看護師等) | 75.0% | 100.0% | 3名 | 4名 | 75.0% | 8名 | 8名 | 100.0% |
一般職(事務職等) | 100.0% | 100.0% | 0名 | 0名 | – | 0名 | 0名 | – |
全体 | 66.7% | 100.0% | 11名 | 12名 | 91.7% | 9名 | 9名 | 100.0% |
2021年度 (4月1日 現在) |
2022年度 (4月1日 現在) |
2023年度 (4月1日 現在) |
2024年度 (4月1日 現在) |
|
---|---|---|---|---|
医療職(医師) | 7.0% | 9.1% | 10.7% | 7.3% |
医療職(医療技術職) | 12.9% | 12.9% | 10.0% | 9.7% |
医療職(看護師等) | 100.0% | 100.0% | 100.0% | 100.0% |
一般職(事務職等) | 9.1% | 9.1% | 10.0% | 8.3% |
全体 | 30.6% | 29.3%% | 30.6% | 29.4% |
【定義】管理職:課長以上