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診療科紹介

乳腺外来

乳腺外来

『乳腺外来』 のお知らせ

 2023年4月より日本乳癌学会乳腺専門医が常勤医として赴任いたしました。これにより、毎週木曜日に乳腺外来を開設いたします。
 これまでの一般外科外来での乳腺診療と同様に、『乳腺外来』では当院での乳がん検診や他施設での検診で異常を指摘された方、乳房のしこりや疼痛、乳頭分泌などの自覚症状がある方、また、他院から精査や治療、経過観察目的に紹介された方、などの診療を行ってまいります。これまで以上により専門的かつわかりやすい乳腺診療を提供できればと考えております。
 実際に診療している主な疾患と検査・治療について説明します。乳腺疾患は大きく良性と悪性に分けられます。

①良性疾患

乳腺症
30代中頃から〜40代にかけて、生理前などに乳腺に痛みや張り、しこりを触れることがあり、乳腺外科を受診される症状では最も多く、ホルモンバランスの乱れが原因の一つと考えられています。生理的変化の一環であり、基本的に治療の必要はありません。
線維腺腫
若い女性によく見られるしこりで、多くの場合治療の必要はありませんが、増大傾向であれば手術が必要になることがあります。
葉状腫瘍
多くは良性で再発や転移の可能性は低いですが、しこりが急速に大きくなることや線維腺腫との鑑別が難しい場合があります。悪性のこともあり、治療は切除が基本となります。
嚢胞(のうほう)
乳腺組織の一部が袋状になり、内部に液体がたまったものです。基本的に治療の必要はありません。
乳腺炎
乳腺に炎症を起こして発赤や腫れ、痛みや熱感を伴う病態です。授乳期が多いですが、授乳とは関係なく起こる場合もあります。膿がたまっている場合は皮膚を切開して排膿する場合もあります。

②悪性疾患

乳がん

 本邦では、乳がんは年間約9万人が罹患し、約1万4000人が乳がんで亡くなっています。一生涯に女性の9人に1人がかかるとされていますが、諸外国と比較しても検診の受診率は低いのが現状です(図1)。
検査はマンモグラフィや超音波で腫瘤や石灰化などを精査し、乳がんを疑う所見があれば針を刺して診断をつけます。合わせて表1に示すように乳がんのサブタイプに分類します。乳がんであれば各種画像検査でリンパ節転移や遠隔転移などの有無を検索し、進行度を評価します。  
 治療には手術、薬物療法(抗がん剤・ホルモン療法)、放射線療法があります。基本は手術による切除が第一選択ですが、表1に示すHER2陽性症例やトリプルネガティブ症例では、術前に抗がん剤治療などを行ってから切除をすることで、病理学的完全奏功(病変が消失)が得られた症例では予後が改善することが期待されており、症例に応じて術前抗がん剤治療を行っています。
 手術は明らかな腋窩リンパ節転移がない症例では、がんを含む乳房の切除とセンチネルリンパ節生検(図2)となります。センチネルリンパ節とは乳房内から乳がん細胞が最初にたどりつくリンパ節のことで、そこに転移がなければ腋窩リンパ節郭清を省略でき、術後のリンパ廔(ろう)(リンパ液がたまること)や上肢の浮腫・しびれの軽減につながりますが、転移症例では郭清が必要です。また、現在では乳房全摘より乳房温存手術が主流で、温存の場合は再発予防のために残存乳房への放射線照射が必要となります。
 術後の補助療法(追加治療)は日本乳癌学会のガイドラインに基づいて行われ、表1の分類を基に治療方針が決められています。
 乳がんは腫瘍の大きさやリンパ節転移の有無などにより、Stage(進行期)Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ期に分類され、全体で5年生存率92.5%、10年生存率87.5%と報告されています(国立がん研究センターがん情報サービスより)。乳がんは消化器がんと異なり、術後5年以降にも再発を認めることがあり、術後10年間の定期的な経過観察が必要です。

図1 検診受診率の国別比較
表1 乳がんのサブタイプ分類
図2 センチネルリンパ節生検

最新のトピックス

 近年、遺伝性のがんの一つである、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)に関わるBRCA1/2遺伝学的検査が若年性乳がん(45歳以下)、トリプルネガティブ乳がん(60歳以下)、両側の乳がんなど、いくつかの条件において保険適用となりました。治療では、切除不能あるいは再発のトリプルネガティブ乳がんに対して適応であったペムブロリズマブ(免疫チェックポイント阻害薬)が再発リスクの高い乳がんにおける術前・術後の薬物療法として適応が拡大されました。また、再発リスクの高いホルモン陽性HER2陰性早期乳癌の術後補助療法として、CDK4/6阻害剤であるアベマシクリブの併用が可能となりました。さらに、オンコタイプDX検査が保険収載されました。これはホルモン陽性・HER2陰性の乳癌で、再発に関わる遺伝子を解析し、再発リスクスコアとして点数化し、再発予防として抗がん剤を行うか、ホルモン剤のみ行うか、といった治療方針の目安にすることができます。
 乳がんは早期発見・治療により根治が期待できる病気です。しかし、検診受診率は低いのが現状で、定期的な検診が望まれます。また、乳がん診療は日々進歩しており、患者さんの選択肢も広がってきています。通常検診のほか、乳腺に関して何か気になる症状がある場合など、乳腺外来を気軽に受診・紹介いただきますようよろしくお願いいたします。

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