道北ドクターヘリ
2009.10~2022.3 MD902
2022.3~ BK117C-2
ドクターヘリとは
救命救急の資機材を装備したヘリコプターに、救急医療の専門医(フライトドクター)と看護師(フライトナース)が同乗して救急現場へ向かい、現場から医療機関に搬送するまでの間、救急患者に救命医療を行うことができる、救急医療専用のヘリコプターのことです。
ドクターヘリは消防から要請を受けて出動します。基地病院『旭川赤十字病院』の屋上ヘリポートからフライトドクター・ナースを乗せて、要請から3分以内に離陸して救急現場へ向かいます。その機動性と迅速性から「空飛ぶ救急治療室」、「究極の救急医療のデリバリーシステム」と呼ばれています。
『救える命を救いたい!』救急患者を病院で待つのではなく、医師が一刻も早く救急現場に出動し、救急現場から適切な治療を開始することで、命を助けられたはずの「防ぎ得る死」を無くすことを目的に活動しております。また速やかな治療の開始により、退院後の早期社会復帰を容易にし、社会的損失を最小限にとどめることも期待されています。
各疾患に対する有効処置開始時間
- 多発外傷・交通事故
- ⇒ 大量出血では30分で約50%死亡 ⇒ 早期より止血術が必要
- 急性心筋梗塞
- ⇒ 発症より90分以内に再開通治療を開始
- 脳梗塞
- ⇒ 発症より180分以内に血栓溶解療法を開始
- 心肺機能停止(心室細動)
- ⇒ 発症より3~5分以内に心肺蘇生(除細動)を開始
ドクターヘリは搬送時間の短縮だけでなくフライトドクターが救急現場等から直ちに救命医療を開始し、高度な救急医療機関に到着するまでの間、必要な医療を連続して行うことにより救命率の向上、後遺症の軽減を図れることが期待されます。
道北ドクターヘリ
道北ドクターヘリは旭川赤十字病院が事業実施主体および基地病院となり運航しております。ドクターヘリは救命救急センターを有する医療機関しか運航することができないことから、道北唯一の救命救急センターであった旭川赤十字病院が北海道から要請を受けて、平成21年10月より運航を開始しております。
運用の流れ
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☆要請☆
119番を受報した消防機関または現場に出動した救急隊が、救急現場で医師による早期治療を要する症例と判断した場合、旭川赤十字病院の運航管理室「道北ドクターヘリ通信センター」に常駐する通信専門員(CommunicationSpecialist)にホットラインで出動を要請します。 要請を受けた通信センター(CS)は瞬時に天候などを調べて出動判断を行います。 『ドクターヘリ エンジンスタート! 現場出動、○○地域、○○地域!!と一斉に無線通信でコール』
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☆出動☆
携帯無線から『ドクターヘリ エンジンスタート!』と鳴り響くと、ドクターヘリ搭乗スタッフは直ちに出動します。 ドクターヘリの出動要請から3分以内には離陸して救急現場へと向かいます。 飛行中、通信センター(CS)から着陸地点の情報や傷病者の容態などの情報が無線で送られてきます。
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☆救急現場に到着☆
救急現場付近もしくは予め指定された地点(ランデブーポイント)に着陸します。 現場到着後、フライドドクター・ナースは直ちに傷病者の処置を行います。
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★ランデブーポイント(RP)
ドクターヘリが安全に着陸して救急車と合流できる場所のことです。 多くは学校のグラウンドや駐車場となっており、地域の消防が確保してくれています。 安全にドクターヘリの離着陸が可能となる様に要請消防本部が、RPの安全確保を行います。
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★救急現場直近への着陸
傷病者の容態によっては、救急現場近くにドクターヘリを着陸させることもあります。上空から安全に着陸できることを確認してから着陸しますが、消防隊や警察からも着陸時の支援をいただけており、より安全に着陸、活動することができます。
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☆搬送☆
搬送先の医療機関の選定は救急患者の容態や地域性を考慮して決定します。基地病院である旭川赤十字病院に搬送されたり、状況に応じて近隣の救急医療機関に搬送します。容態によってはドクターヘリではなく、救急車にフライトドクター・ナースが乗り込んで医療機関へ搬送することもあります。
運航体制
土日祝祭日を問わず1年中運航(待機)しています。
- 4月
- 8:45~17:30
- 5月~ 8月
- 8:45~18:00
- 9月
- 8:45~17:00
- 10月
- 8:45~16:30
- 11月~ 1月
- 8:45~16:00
- 2月
- 8:45~16:30
- 3月
- 8:45~17:00
ヘリは基本的に旭川赤十字病院屋上ヘリポートで待機・駐機していますが、冬期間(雪が降っている間)は道北ドクターヘリ格納庫で待機・駐機をします。
そのことから、夏の間はいつも旭川赤十字病院の屋上にドクターヘリの姿が見られますが、雪が降り始めると見られなくなるのはこのためです。
・道北圏(上川・留萌・宗谷管内) ・空知管内の一部 ・オホーツク管内の一部 ・十勝管内の一部
※16消防本部 60市町村
救急車と同様にドクターヘリによる搬送の費用はかかりません。ただし、救急現場やドクターヘリの機内などで提供した医療行為については、医療保険の範囲内で医療費がかかります。
機体の紹介
- 機種:MD902 Explorer
- メーカー:MDヘリコプターズ
- 乗員数:(EMS機)乗員2名・乗客4名
- 全長:12.37m
- 全幅(メインローター直径):10.3m
- 全高:3.66m
- 機体重量:1,531㎏(空虚) 2,948㎏(最大)
- 最大積載量:1,417㎏
- 速度:260㎞/h(最高) 200~220㎞/h(巡航)
- 上昇限度:6,000m
- 最大航続距離:500㎞
- 機外騒音:85.6db(離陸) 83.3db(上空通過) 89.6db(着陸)
- キャビン容積:4.9立方メートル
- エンジン:Pratt & Whitney Canada PW207E(646shp)×2基
- 機種: BK117C-2
- メーカー: KAWASAKI製
- 乗員数:乗員2名・乗客4名
- 全長:13.0m
- 全幅(メインローター直径):11.0m
- 全高: 3.96m
- 機体重量: 3585kg
- 超過禁止速度: 122kt
- 速度: 220~240 km/h(巡航)
- 最大航続距離: 550km(約150分)
- 上昇限度: 5,486m
- 使用可能燃料: 736ℓ(589kg)
- ドクターヘリの搭載燃料: 300kg≒75分
- エンジン:TURBOMECA ARRIEL1E2(690SHP)×2
- 患者監視モニター
- 超音波診断装置
- 除細動器
- 人工呼吸器
- 吸引器
- 酸素ボンベ
- シリンジポンプ
- 輸液ポンプ
- ストレッチャー
- バックポード
- 医療器材セット(診療材料、薬剤) 等
基地病院の設備
- 名称:旭川赤十字病院 飛行場外離着陸場(旭川赤十字病院屋上ヘリポート)
- 位置:北海道旭川市曙1条1丁目1番1号
- 標点:北緯43度46分13秒・東経142度20分56秒
- 標高:445ft
- 飛行場の種類:飛行場外離着陸場(建築物屋上)
- 着陸帯の材質:コンクリート製
- 着陸帯の強度:機体全備重量 6tまで
- 着陸帯寸法:巾18.5m×長さ21.0m
※着陸帯包括寸法:巾23.5m×長さ26.45m(621.5㎡) - その他主要施設
- 油脂回収施設(油水分離層完備・回収容量3,220L)
- 脱落防止設備(着陸帯周辺(4方向)に巾1.55以上で設置(最大巾2.72m))
- 航空燃料給油設備(屋上ヘリポートで給油可能)
- ヒーティング設備(融雪:着陸帯・脱落防止設備全域)
- 消火設備(連結送水管、消火器50型・20型・10型)
- 風向指示器
- 航空灯火設備(夜間照明)
- 境界灯付着陸区域照明灯×6灯、境界灯×2灯、境界誘導灯×8灯
- 位置表示灯×1灯、風向灯×1灯
- 監視カメラ、風向風速計 等
道北ドクターヘリの格納庫は旭川医科大学の敷地内にあります。旭川赤十字病院の周りは住宅街で適当な建設用地を確保できなかったため、旭川医科大学の協力を得て、無償で建設用地の貸与を受け、旭川赤十字病院が格納庫を建設しました。
また、旭川赤十字病院は格納庫を建設するにあたり、建設費の半分を運航圏となる55市町村から助成をいただいております。道北ドクターヘリ運航には、旭川医科大学や地域自治体などからも協力を得ております。