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診療科紹介

形成外科Q&A

形成外科Q&A

形成外科はどんな科ですか?

そうですね一言でいうのはちよつと難しいのですが、たとえば交通事故の傷あとを治したり、ヤケドのあとに皮膚移植をしたり、唇裂などの顔の先天異常を治したりするのも形成外科の大切な仕事の一部です。

言葉がまぎらわしいので混同されますが、整形外科は主として骨、関節の外科です。だから形成外科とは違います。
また、よく美容整形といわれますが、いわゆる「美容整形」というのは、二重まぶたにしたり鼻を高くしたりするように、美容を目的にもともと正常な体にメスを加えることです。これも整形外科とは全く別のものです。実は、「美容整形」という名称は使うべきではないのです。近年、医療法が改正されこの分野を美容外科と呼ぶように定められました。ところがこれは形成外科に含まれる分野なのですが・・・。

昔はどんな手術でも、外科だけでやっていました。しかし、医学が進歩し複雑になってくると何でもというわけにはいかず、各分野を分担したところから専門家が生まれました。皮膚移植なども、昔はふつうの外科の仕事でした。それがいろいろな植皮術が聞発されるようになると、高度な技術を習得した専門家が必要になってきたのです。
また以前は、傷あともただ傷がくっつけばいいという考えでした。いまもそんな考えが残っていますが、傷あとを持つ当人にとってはその悩みは深刻です。それらを解消するためにも、専門的な高度の技術が望まれるようになったのです。

ケガでも手術でも、いったん受けた傷のあとは残念ながら完全になくすことはできません。しかし、傷あとが目立つ場合は、形成外科手術でかなり目立たなくすることは可能です。形成外科では、肉体的苦痛も精神的苦痛もまったく同じであると考えます。手術によって傷あとを隠し、形を整えることで患者さんの悩みを救い精神的なリハビリテーションをもはかる、ということです。

いわゆる乳房再建術によってかなりのところまで治せるようになりました。

残念ながらわが国ではまだどこにでもあるというわけにはいきません。それでも最近、形成外科を持つ病院も増えてきました。たとえ形成外科というものがなくても、どこかの科の中で形成外科の診療を行なっているところも増えてきています。
形成外科専門医として学会認定医という資格があり、日本形成外科学会の会員の中で形成外科を専門にやりたい人が資格審査をパスすると、学会で認定医の資格が与えられるシステムになっています。
旭川赤十字病院形成外科は日本形成外科学会より、認定医研修施設の指定を受けています。

形成外科で取り扱う病気や変形の大部分は健康保険が使えます。
厚生省では「良性皮膚腫瘍及び母斑、瘢痕変形、唇裂、小耳症、四肢奇形など身体外表部の後天性及び先天性変形では、いわゆる美容のためのものは給付外とするが社会通念上医師として治療の必要があると認められるものには給付して差し支えない」という通達を出しています。形成外科の医師に遠慮しないで相談してください。

そのとおりです。先天性変形やひどい機能障害のある後天性変形の子供には、育成医療法が適用され治療と交通費を国が負担してくれます。ぜひ保健所に行って相談してください。
申請書には担当する形成外科医の治療費の概算と治療法についての記入が必要です。なお、育成医療は国より認可された病院と医師に限られますので、すべての病院でこの治療を受けられるとは限りません。注意してください。
旭川赤十字病院形成外科では育成医療を取り扱っています。

キズあとを、どう治す

ヒトの皮膚は、一度切りキズや損傷を受けると必ずキズあとを残します。きれいに治っていても、よく見れば何らかのキズあとが見られるものです。そんなキズあとを、できるだけ目立たないようにし、もとの状態に近づけるのが形成外科なのです。そのため、手術方法、切り方、縫合法、手術後の治療法などに工夫が凝らされ、細心の注意が払われています。そして治療がうまくいった場合は、キズあとを探してもちょっとわからないほどです。もちろんそれは、年令、皮膚の状態、傷の方向と程度、部位によって異りますが、一般的にいって、1メートル離れたところからでは、キズはほとんどわからないか目立たない程度まで治ると思ってよいでしょう。

ヒトの皮膚についた切りキズや損傷は、ふつう治った後に瘢痕(キズあと)を残します。このキズあとの程度は、キズの種類、大きさ、人種、個人、部位、年令や性などによって違います。したがってキズを受けた後、そのキズがどのような瘢痕を残すのかを予想することはむずがしく、2~3ヶ月経過を見る必要があります。ただ、キズを受けた本人が、以前に受けたキズのキズあとを持っている場合は、それを参考にしてある程度は推定できます。もし受けたキズがシワの方向であったり、年をとった人である場合、比較的目立たないキズになると予想できます。
しかし、前述したようにキズの種類、大きさ、部位、年齢によって経過が異なりますので、これはあくまで予想であり確実ではありません。

目立つ瘢痕(キズあと)を目立たなくするには次のような特別の手術方法と手術材料を用います。

(手術方法)

目立つ瘢痕がもともとのシワとほぼ同じ方向にある場合は、その瘢痕を切りとった後、皮膚の緊張をなくすために皮下を広くはがし、「真皮縫合」という特別な組織内での縫合をします。これがうまくできた場合は、表面の皮膚は縫合しなくてもよい程緊張がなくなりピッタリ密着します。したがってこの後、表面の皮膚を縫わなくてもよいくらいですが、キズあとをより目立たなくするために、細い糸でこまかく縫合します。この糸も3~6日で抜糸して糸のキズあとを残さないようにします(キズの大きさを表わすのに昔は「何針縫合したキズか」と表現していましたが、形成外科手術では使いません)。このように二層に縫合し、こまかく縫うため、20㎝のキズでも7~8針程縫合することになります(外科では2針程度)。

(手術材料)

キズあとを残さなくするには手術の技術はもちろん、手術材料も特殊なものを使用します。糸も皮膚にキズをつけないように針と糸が1本状になった細いもので、ナイロン、テトロンといった合成繊維や、時間がたてば溶けて吸収される特殊なものが用いられます。また、こまかい手術操作に適したピンセットやメスなどの形成外科専用の手術専用器械も開発が進んでおり、からだの組織に損傷を与えないように配慮されています。

形成外科における最も基本的な手術手技の1つで、副切開をいれてつくった2つの3角形の皮膚を入れ換える手術です。この手術を行なうことでいろいろな効果が得られます。たとえば、このZ形成術を用いて、シワの方向に交叉した直角のキズを、シワと同方向に変えたり、ゆがんた眉を正常な位置にもってきたりできるのです。この手術を行なうと、キズをジグザグに縫合し直すので全体としては、キズの長さは長くなりますが、1つ1つのキズは短くなってキズが分断されて見えます。したがって見る人の心理的にも良く、また実際に表情をつくった時にもキズが目立たずに良い結果を生むのです。

顔や手足のような露出部位にキズを受けてしまい、そのキズあとを残したくない場合は、形成外科へ行きましょう。最近は各地にたいてい形成外科がありますし、昼間ですぐに専門医に治療してもらえるなら、直接形成外科に行くことをおすすめします。もし、全身症状が良くなかったり、止血ができない場合は、いったん救急病院で手当てを受けた後、形成外科医に相談してください。形成外科では、独特な処置や方法を用いていますので、キズを目立たなくする方策がとれますし、適切なアドパイスも得られるでしよう。

全身の状態が悪かったり、応急処理が必要で形成外科ヘ行けなかったため、目立つキズあとが残ってしまい、後で精神的に悩むことがあります。このような場合形成外科では、経過をみながら形成手術の時期を決めます。この時期は人(症例)によって違いますが、ふつうはキズを受けてから2~6ヶ月以後に行ないます。もっと早く手術を行なうことも可能ですが、2~6ヶ月以上経過した方が炎症や浮腫(皮下組織に水がたまる症状、むくみ)がとれ、周囲の皮膚もおちついて、形成外科の手術後に、良い結果が得られるからです。

ふつうヒトの皮膚は、キズを受けると必ずあとが残りますが、そのキズあとの程度は、キズの性質や部位、キズを受けた本人の体質によって治り方(経過)が違います。軽いキズはふつう1~2週間でキズがふさがったり、茶褐色のかさぶた(痂皮)がとれて赤味がかったピンクの新しい皮膚がでてきたりします。ほとんどの場合には、それが2~3ヶ月のうちに白くなりもとの皮膚のように治りますが、ときにはこれと別な経過をたどることがあります。
特に深いヤケドをした場合や、深いキズで2週間以上も浸出液が出て治らない場合、キズの部位が肩や胸である場合、あるいはその人の体質がケロイド体質である場合などには、いったんキズが乾いたりふさがって治ったように見えてから1~2ヶ月のうちにしだいにキズが赤く盛り上ってくることがあります。この外傷、手術、ヤケドなどの皮膚のキズ痕が異常に盛り上がったり赤くなる良性のできもの(腫瘍)をケロイドといい、キズの範囲を越えて広がりかゆみや痛みが強く、なかなか平らになりませんし治ってもキズあとは目立ちます。
一方の肥厚性瘢痕はキズの範囲を越えて赤みや盛り上がりが広がることはなく、自然に治る傾向があります。
いずれにせよ、このようなケロイドや肥厚性瘢痕にならないよう最初からアフターケアを行なうことが大切です。

かゆみ・痛みを感じたり、異常な赤みがあったり、盛り上がりが徐々に増大するといった症状がみられます。また、関節部位ではかたく、こわばることがあります。

キズの治る過程でキズの修理役である線維芽細胞がコラーゲンを異常に造るために生じます。なお、人種、ホルモン、キズの部位も関係し、またなりやすい体質もあります。

かゆみや痛みに対して、外用薬(塗り薬、貼り薬)や内服薬が効果を示します。また、肥厚性瘢痕の盛り上がりやこわばりに対して、弾力包帯などによる圧迫固定、手術による除去が行われます。比較的治りにくいケロイドにはステロイドの局所注射が使われることがあります。いずれもすぐに効果は得られないことが多く、少なくとも数ヶ月から2~3年程度は根気よく治療を続ける必要があります。

形成外科の手術は、討画(作図)に1/4、手術操作に2/4、手術後のアフターケアに1/4と、その重要性の比率があるとされ、アフターケアも大切な要素です。もし形成外科手術を行なった後ケロイドが発生すると、キズあとが残らないどころがキズあとよりもひどくなってしまうため、十分なアフターケアが必要です。その方法は、手術後約4~6週間、場合によっては3ヶ月程、ふつうの(薬のついていない)テープを用いてキズあとを圧迫し、また皮膚の緊張緩和を行なってキズを目立たなく仕上げる努力が必要です。最初はこれらの処置方法の指導を受け、その後は自分で行ないますが、2~3週間に一度くらいは診察を受けてください。このとき少しでもケロイドになる徴候があれば、すぐに予防処置をしなければなりません。一般にケロイドは手術後1~2ヶ月までに現われるので、この間が要注意、形成外科医の指定する日時にチェックを受けてください。ケロイド予防治療としては、ステロイド軟膏などによる密封圧迫療法、放射線照射法などがあります。

ヤケドを、どう治す

ヤケドが重いか、軽いかは主としてヤケドの範囲と深さの程度によって決まります。
範囲の計算は(9の法則)という図式でおおよその見当がつけられます。また手くびから先の広さが1%とみて討算することも簡単な方法です。
深さについては1度、2度、3度、に分けられます。
(1度)は日やけと同じでただ赤くなってヒリヒリ痛みますが、ほうっておいても自然に治ってしまうので治療の対象になりません。
(3度)というのは皮膚の全部の厚さが焼けてしまうので皮膚は硬くなってしまい、痛みもかえって少いのがふつうです。
(2度)はこの中間の深さのもので水庖(水ぶくれ)をつくります。この2度のヤケドは深い2度と浅い2度とでは症状も治り方もかなり違います。浅い2度の場合は水庖のところが赤味があって痛みが強く、適当な治療がされると、およそ2週間ぐらいで自然に上皮がはってきて、ほとんどあとをのこさないで治ります。
深い2度の場合は赤味が少く、むしろやや白っぽくみえ痛みも少いのが普通です。水庖の下に死んだ皮膚の白っぽい痂皮(かさぶた)ができます。これがとれると下に皮膚がはってくるわけですがそれまでにかなり日数がかかり、治った後にもかなり目立ったあとを残します。
したがって深い2度の時は3度と同じように植皮が必要となる場合が多いのです。
(3度)は皮膚が全部やられてしまうので、ごく狭い範囲の場合をのぞいて植皮が必要となります。
さて、ヤケドが重いか、軽いかの判定はおおよそ、1度はのぞいて2度3度のヤケドを合わせて体の面積の15%以上あれば、重症と考えられ入院して積極的な治療を行わないと生命の危険があります。
小児や老人の場合は10%ぐらいでもショックになることがあり当然入院が必要となります。またもっと小範囲のものでも3度や2度の深い場合や、体の部位によって、たとえば顔や手のヤケド、肛門部、陰部のヤケドの場合も入院した方が良いでしよう。

重症のやげどの時は数時間後にショック状態になるのがふつうですので入院して点滴注射などによるショックの対策を考える必要があります。
このヤケドショックの治療はなかなかむずかしいものなので、十分な設備と専門家のいる病院への入院が必要です。ショック時期をうまく脱出できてもその後には広い創面が生じ植皮などでカバーしなければなりません。
またその後に創あとの瘢痕のため、関節の動きが悪くなったり、醜い瘢痕ができたりしますので、形成外科のある総合病院が一番適していると思われます。

まず、冷たい水で冷やすことです。衣服に火がついた時はもちろんですが、熱湯をかぶったような時でも、衣服の上からとにかくすぐに冷たい水をかけることが大切です。ヤケドの部分を冷やすとヤケドの深さが進行するのを止めることができると考えられています。またヤケドの痛みに対しても非常に効果があります。
冷却法で手っ取り早く簡単なのは手足なら水道を流しっぱなしにして、水をかけることです。
また、きれいな容器に水を満たし、つけるのも良いし、水につけられない場所なら清潔なタオルを使って冷やすのも良いでしよう。
冷やす温度は、10℃から15℃ぐらいが良いといわれ時間は10分から20分ぐらいが必要でしょう。
冷やした後は何もつけないで清潔なタオルで創をおおって病院に行くことです。
消毒薬をつけることは必要ありません。強い殺菌力の薬は創に対しても障害があります。今でもヤケドに味噌や油をぬって来る人がありますが逆効果ですので絶対やめてほしいものです。
浅い小範囲のヤケドの場合は、ヤケドしたところを水道などでよく洗い流します。その次に、抗生剤の入った軟膏をぬってガーゼをかぶせて軽く圧迫して包帯を巻きます。創からの分泌物がなくてガーゼの表面が乾いているようならば4~5日してから包帯を交換します。一番下のガーゼが乾いて創にくっついているような時は無理に取らないでそのままにしておいて、その上からガーゼを当ててまた包帯をします。
10日ぐらいで自然にガーゼがはがれてきます。4~5日後になっても分泌物でガーゼがぬれているような時はヤケドが深いか、感染している可能性が強いので素人治療では無理です。必ず医師の治療をうけてください。

ヤケドの後遺症として一番問題となるのは、治ったあとの創痕の醜さ(醜い瘢痕)と、創痕のひきつれのために関節の動きが悪くなったり形が変ったりすること(瘢痕拘縮)でしょう。
ヤケドのあとの醜い創痕に対しては、まずしばらく経過をみることが大切です。瘢痕は創が治ってから数ヶ月から1年ぐらいは赤くて盛り上がっていますが、徐々に色がうすくなり、平坦になって目立たなくなってくるのがふつうです。2~3年待ってそれでも瘢痕が目立つようなら、この瘢痕を切りとって植皮をするか、範囲が狭ければ、縫い合わせるかします。
しかし植皮の場合でも非常にうまくいったとしても、全く自然な状態となるわけではなく、また皮膚を採ったところの痕の問題もあります。
非常に醜い時は植皮することの利益が大きいのですが、それ程でない場合は植皮に慎重でなければなりません。あまり目立たない創痕の場合、特に露出しない部位の時はむしろ手術を控える方が良いように思います。
なかなかむずかしい問題ですので形成外科の専門家に、相談されることをおすすめします。
第2の創痕のひきつれの問題です。深いヤケドの創面が治る時は、植皮がなされない場合、創がちぢんで(収縮して)閉鎖されることになるので、ひきつれることになるわけです。
そこでこのひきつれ(拘縮)をとるとなると、思ったより大きな植皮が必要になることが多いものです。この拘縮については新しいヤケドの治療の時におこさないようにすることが大切だといえます。
しかしいろいろの事情でこの拘縮のおこることはさけられないことも少くありません。一旦発生したひきつれに対しては、あまり長い期間そのままにしておかない方が良いでしよう。

ヤケドがある程度以上の深さになると植皮をしなければいつまでも創がふさがらなかったり、たとえ創がふさがっても醜い創痕を残したり、ひきつれのために、関節の動きが悪くなったりします。
子供の時に囲炉りのヤケドで指がくっついてしまった野口英世の話は皆さん御存知のことですが、植皮の技術の進歩した、いまならこのようなことはなかったのではないかと思います。
形成外科の進歩によって植皮の技術も進歩したため、通常の植皮でつかないということは、あまりなくなりました。しかしむずかしい手術であることにはかわりがありません。皮膚をうすく採って植えたり厚く採って植えたり、いろいろの方法が行われます。
一般的にうすい皮の方がつきやすいし、皮膚を採ったところも治りやすく痕もほとんど残りません。
しかし、植えたところは不自然で外力にも弱いのが欠点です。反対に厚い皮膚を使うとつきにくく、採ったところにも創痕を残します。しかし、植えたところは自然で外力に対する抵抗も強くなります。
したがってヤケドの創の状態や部位などを考えていろいろの方法が行われることになります。
植皮した場所は約1週間は包帯で圧迫して固定します。皮膚がつけば約1ヶ月でふつうに使えるようになります。

アザを、どう治す

アザには茶褐色、黒色、青色、赤色、黄色など、自然に消えるもの、消えないもの、生まれつきのもの、かなりたってから現われるもの、とさまざまな種類があります。
茶褐色のものではシミのようなもの(扁平母斑)がもっとも多く、黒いものでは、代表的なのが色素性母斑で、ホクロといわれる小さなものから、半身をおおう巨大なものまであります。青いものには蒙古斑、太田母斑、青色母斑などがあり、新生児のおしりにみられる蒙古斑は8才ごろまでに消えますが、おしり以外の場所にある異所性蒙古斑は消えないこともあります。赤いものは血管腫で、皮膚表面から盛り上がらないもの(単純性血管腫、サーモンパッチ)と、盛り上がるもの(苺状血菅腫、海綿状血管腫)があります。さらに、いぼ状にザラザラ触れるものに表皮母斑、黄色く頭によくできるアザで、まるく脱毛したようにみえるものに類器官母斑があります。

赤ちやんの上まぶたや、眉間にできる淡紅色の「サーモン・パッチ」(紅鮮様血管拡張)といわれるものや、赤いイチゴのように盛り上がった「苺状血管腫」などは消えるアザの代表的なものです。「サーモン・パッチ」は生まれて1年以内に、「苺状血管腫」は4~7才くらいまでに白然に消えるものがほとんどですから、あわてずにようすを見ることがたいせつです。
ただし、赤ちやんの赤アザの中には注意すべきものもあります。
「苺状血管腫」は生後1~4ヶ月の間に急激に大きくなり大出血をして死んでしまうことがあります。また幼児期に、目のまわりにできて目をふさぐと、ものを見る機能の発達が損なわれ、弱視になる恐れがありますし、口のまわりにできると、おっぱいがうまく吸えなかったり、口のまわりが欠けてしまったりします。股にできると、オシッコで汚れて、細菌が繁殖し深い潰瘍になりますので注意が必要です。

アザの種類、範囲などによっていろいろな治療法があります。手術をして切り取ることも多いのですが、レーザー治療も盛んです。それ以前では、凍結療法、放射線治療法、電気凝固療法、皮膚を削り取る剥削術などもありました。
黄色いアザは「類器官母斑」と呼ばれ、頭によくできます。乳幼児期にはつるつるしていますが、思春期になるとザラザラした状態となり、悪性化しやすいので、発見したら切り取ります。
頭の皮膚はうまく切開すると引きのばすことができるので、このアザを手術で切り取っても目立たないようにできます。

ホクロが急に大きくなった時、茶色から黒までの色ムラをもってきた時、黒いホクロのまわりが少しづつ赤味を帯びてきた時、黒いホクロから墨汁がにじみ出たようになった時、これらの時は注意が必要です。また、結膜、鼻の穴の中、口唇、外陰部、足の裏のホクロも悪性化することがあります。

精神的なひけ目を感じさせない時期までにするのが原則ですが、頭などにあるために大きな手術になる場合は、5才以後にするのがよいでしょう。また太田母斑の場合は、病巣の拡大や進展が停止する時期まで待って治療をした方がよい場合もあります。

小さなアザは一度に切り取ることができますが、幅3cmくらいのものでは、一度に切り取ると皮膚が急に引っぱられて仕上がり悪くなる場合も起こるので、半年くらいの間をおいて何回かに分けて縫い縮めます。また、植皮術というのはアザの部分を切り取り、その部分に体のほかの部分からの皮膚を移植するもので、これによってかなり大きなアザも治療できます。
手術は痛くありません。
小さなものなら、局所麻酔をして縫い縮めます。局所麻酔の注射は、歯を抜く時のものと同じで、さらに痛くないように工夫(痛くない麻酔注射)されています。また植皮術を必要とするような場合は、全身麻酔で行いますから手術中の痛みは感じません。

植皮してしばらくは移植した皮膚とまわりの皮膚の色調は違いますが、2~3年たつと、まわりの皮膚となじんであまり目立たなくなりますし、術後障害を起していた皮膚の機能も少しずつ回復してきます。
皮膚の構造をすべて含んだ全層皮膚移植の場合ははとんど縮みませんが、移植皮膚の厚さが薄くなるほど縮みやすくなります。また、成長期の患者に移植された皮膚は術後も本来の成長力を失わずに移植した部分の環境に適応して成長します。

移植した皮膚は、術後1時期、表面が乾燥することがあります。そのような場合は、油性軟膏を使用すると良いでしょう。また、移植皮膚の順応化が完了するまて(約1~2年)は、日焼け止めクリームなどで遮光に努める必要があります。そして、移植皮膚の辺縁瘢痕形成を防止するためには少くとも6ヶ月から1年間はサポーターなどで固定すると良いでしよう。もし辺縁の瘢痕が目立つ場合でも、外来通院で局所麻酔による修正が可能です。

レーザー光の種類には、アレキサンドライトレーザー、ルビーレーザー、色素レーザー、YAGレーザー、炭酸ガスレーザーなどがあります。太田母斑や異所性蒙古斑、扁平母斑、しみ、単純性血管腫、黒子などに効果が認められます。まだまだ発展しそうです。くわしくはレーザー治療の項目を。
また、手術やレーザー以外でアザをカバーするには、カバーマークなどの化粧品でおおう方法があり、皮膚面から盛り上がっていない頬のアザ(太田母斑や、扁平母斑、単純性血管腫)などは、自然の色調にかくすこともできます。

みつ口は、治りますか?

いわゆるみつ口は、唇裂(しんれつ)といわれ、もうひとつよく似たものに狼咽(ろういん)とも呼ばれる口蓋裂(こうがいれつ)があります。
唇裂も口蓋裂もよい治療を受ければ、ふつうのこどもとほとんど変わらないぐらいにまで治ります。希望をもって形成外科医にご相談ください。

日本では出産児500人につき1人の割合で見られます。唇裂・口蓋裂は、全く健康な両親の間に生まれる場合が多く、ひとつの家族やある家系に生まれるということはあまりありません。
遺伝的な因子をまったく無視することはできませんが、環境因子が注目されています。
環境因子としては、いくつかの薬剤、たとえば、ステロイドホルモン、ジフェニールヒダントイン(てんかんの薬)ジアゼパム(精神安定剤)、避妊薬などがあり、その他、風疹ウイルス、トキソプラズマ、インフルエンザウイルスなどの妊娠中の感染、高齢出産、妊娠中の腹部の外傷やレントゲン照射、たび重なる自然流産などがあげられます。
しかし、これらの発生因子とされているものでも、ひとつの因子が単独でということより、いろいろな要因が重なり合って奇形児が生まれると考えられています。

口唇は妊娠の4~7週。口蓋の方は、口唇よりやや遅れて胎生の4~12週の時期に形ができあがります。
口唇や口蓋が形造られるその時期に、胎児か母体に何らかの原因があると披裂を生じることになります。

唇裂・口蓋裂児は正常児にくらべて哺乳が容易でないのは当然ですが、ミルクがよく飲めないだろうということで、生まれてすぐ鼻からチユーブを入れ、そこからミルクを飲んでいるこどもがいます。
唇裂・口蓋裂児でも、特別な場合をのぞいては、そのような方法ではなくふつうの方法で乳を与えるべきです。
その理由は、ミルクを吸ったり飲みこむことが正常児より多少劣っていても、哺乳方法を工夫して飲ませれば、舌や、口の中の筋肉がよく発達して正常なことばの機能を得るのに役立つからです。
1回の哺乳量が少ないときは回数を増やして飲ませることも大切でしょう。

少なくとも生後3ヶ月、体重5~6㎏ぐらいになってから手術を受けるのがいいでしょう。
形成外科医が口唇形成術を行なった場合は、キズあとがほとんど目立たなくなるだけでなく、口唇の筋肉を正常な走行に直して縫い合すので、口唇の機能もよくなり、口唇や鼻が顔全体の中で調和のとれた状態になります。

手術時期は、ことばの発達とあごの骨の発達の、2つの面を考えて決められます。
口蓋裂児は正常児にくらべて生まれつきあごの発育が悪いことが多いのですが、あまり早く手術をすると、上あごの発育を一層悪くする場合があるので、あごの発育をあまり妨げず、鼻咽腔閉鎖機能を正常児と同じようにする手術法が用いられるようになりました。
また口蓋裂の手術では、ことばの発達という問題が重要です。どのこどもでも1才頃からことばを話し始めるため、1~2才で、体重が約10㎏の頃に手術して機能を高めると、燕下運動やことばの発育は正常児と同じようになるのです。

口蓋裂のこどもでも、知能、聴力、環境など「ことば」の発達に必要な条件に、ひどい障害がないかぎり、ふつうのこどもと同じように1~2才を過ぎる頃から話し始めます。そして適切な時期に良い手術を受けた患児の場合は「ことば」の発育を注意することで、約90%は正常なこどもと全く同じ状態で話せるようになります。
しかし手術の時期が遅れてしまったり、披裂の程度がひどかったり、適切な手術が受けられなかった場合には、「ことばの障害」を残すことがあります。
しかし、この場合にも、その原因が何かよくみてもらい発達の経過を見る、言語訓練をする、あるいは追加の手術をするなど適切な治療をうければ必ず昔通のこどもと同じように話せるようになります。
「ことばの障害」を残さないようにするためには、適切な時期に形成外科手術を受けるとともに、言語治療の先生について、手術後の経過を見てもらう必要があります。

唇裂の1回目の手術で鼻が完全になおることは少なく、2回目の手術が必要です。きずあとや、鼻の手術をいつ行なうかはその程度部位などにより一概に決められませんが、軽い場合にはなるべく13~15才以後の方が.本人の協力も得られ無難です。
あまり目立つ場合とか少しの修正は就学前に行なうこともあります。

本格的なあごの矯正は昔通、永久歯にはえかわる頃から始めます。しかしそれ以前に手術してもらった先生から矯正の専門医に紹介してもらい、一度診てもらっておいた方がいいでしょう。手術が必要なこともあります。

唇裂・口蓋裂の場合の入院、手術などの治療は健康保険が使えます。また、国が育成医療制度による医療費の給付を行なっています。

手足の先天異常を、どう治す

手・足は指が5本づつあり、それぞれに爪があり、均整のとれた形で、関節の動きも十分にあるものを正常とすると、この状態からはずれたものが異常ということになります。それは、小指が少し短かいような軽いものから、指がまったくなくなってしまったような重度のものまでさまざまです。他にも、指の数が多いもの(多指症)から、指の数が少ないもの(欠指症)、さらに指の長さが短かいもの(短指症)、大きいもの(巨指症)などがあります。

先天異常の発生原因を知ることは大変むづかしいのですが、原因は内因子によるものと、外因子によるものの2つに分けられます。内因子によるものは遺伝性がありますが、外因子によるものにはありません。内因子と外因子との比率については、一般に手足先天異常の20%が内因子、20%が外因子(うち10%はウイルス)と考えられ、他の60%はよくわからない因子とされています。外因子のなかでウイルスが原因となるものは水痘症、麻疹、流行性耳下腺炎、脊髄性小児麻痺、流行性肝炎、風疹などです。

手足の先天異常はいろいろあり、異常の種類、状態によって手術時期が異なります。原則的には、生後の早い時期での手術は避けなければいけません。たとえば、発育旺盛な生後すぐに手術を受け、誤った切開が加えられると、たちまち指の屈曲変形をおこします。また、骨が発育する部分を骨端線といいますが、この部分のわずかな障害も後の発育に大きな影響を与えます。このためいままで一般的に、手術は生後2年以上たってから、とされていました。
しかし、手術手技の発達、麻酔の進歩などによって現在では、ふつう生後1年前後に、手術ができるようになってきています。先天性絞扼輪症候群で指先がくっついているような場合は、生後できるたげ早く手術しなければなりません。また反対に1年以上待った方が良い場合も多くあります。
治療は、手の外科が得意な医師のいる病院で受けるのがよいでしょう。手の外科に習熟している医師なら足の先天異常の治療もうまくできるからです。また、手足の先天異常はほとんどが育成医療制度の対象となりますので、育成医療の指定を受げている医師(育成医療指定機関)を選ぶこともよい方法です。

よく人目を避けるように、異常の手に手袋や包帯をしているお子さんを見かけますが、手は使うためにあるのですから、使わないと成長しません。ときには上肢全体の発育障害をきたし、異常そのものによる発育障害よりも高度になる場合もあります。
また、親があまり神経質になって手をかくしたりすると、こどもも人前に出ることを恥しく思うようになり、結果的に劣等感を持ってしまう恐れもあります。注意してください。このような手足の先天異常の子どもは意外と多く、たとえば、多指症は出生1000人に対して、1~2人の割合です。

主なものについて簡単に説明しますと

多指症

手足先大異常のうちでもっとも多く、手では母指の側に圧倒的に多く発生します。過剰の指が痕跡的に突き出す軽いものから、細い茎でぶらぶらする指がつながっているもの(浮遊型)、完全な指の形を示すものまであります。本来の母指が正常の大きさであり、過剰の指が小さければ単に切り取ってしまうだけの簡単な手術ですみますが、本来の指が小さい時は、過剰の指の半分、または1部をひっつけて、なるべく正常の母指の大きさになるようにします。

多合指症

足に多く、とくに小指側に多発します。
第5・6指のうち、発育の悪い指を切除するとともに、合指に対しては指の分離を行います。

合指症

指がたがいにくっついているもので、多指症についで多い異常です。生後1才過ぎに指を分離しますが、ただ分離するだけでなく、あとで指が変形しないような細かい技術をほどこします。多くの場合、分離の時に皮膚の移植が必要となります。

屈指症

指が屈曲した状態で、伸ばすことができない異常をいい、小指に多く発生します。軽度のものは治療の必要はありません。原因は皮膚の短縮や屈筋腱の短縮・異常などで、皮膚性のものは皮膚移植が必要となり、腱の短縮や異常による場合はこれを切離します。

先天性握り母指

母指が屈曲し、伸ばすことができない状態のものです。ばね指(弾撥指)によるものと異り、中手指節関節(指のもとの関節)で屈曲しています。軽度のものは装具による矯正でよくなりますが、伸筋腱の異常(欠損や形成不全)がある場合は4~5才になって腱の移植をすることが必要となります。

斜指症

指が横へまがっているもので、小指の第1関節(遠位指関節)が母指の側へ屈曲しているものが多いようです。機能的にはほとんど支障はありませんが、外観上まっすぐにしたい場合はまがっている中節骨を切って矯正します。

指節癒合症

指の関節がくっつき、動かないものです。非常にまれですが、強い遺伝件を示します。一般的に日常生活上はほとんど支障ありません。

短指症

指が短かいものを総称します。多くは両側性、対称性におこり、女子に多発します。手では母指や小指が短かくなっていてもあまり目立たず、治療の対象にならないことが多いのですが、手の中指が短かい場合、足に多く見られる第4指の短縮の場合は目立ちますので、骨盤の骨(腸骨)を移植して延長します。

合短指症

合指症をともなった短指症を合短指症といいます。男子に多く、ほとんど散発性で遺伝性は見られません。
一側性に現われ、また同側の胸筋の欠損をともなうことが多くポーランド症侯群といわれます。1才前後に手術をします。

先天性絞厄輪症候群

何本もの指が切り株状に切断されているもので、多くの場合、深くくびれた溝(絞扼輪)をともないます。女子に多く、遺伝性はありません。これの重度のものは、手がなくなってしまう無手症または前腕切断の型となります。絞扼輪より手足の先の方が浮腫を起して太くなる場合には、この溝をなくす手術(Z形成術)を行います。また指先のみがくっついている場合は生後できるだけ早く切り離し、必要に応じて皮膚移植をすると指の発育を促します。

欠指症

指の数が少なくなるもので、母指側に発生するものがもっとも多く、母指形成不全症といわれます。母指が細く、よく動かない軽度のものから、母指の完全欠損までいろいろな段階があります。
母指が完全に欠損する場合は、示指を母指の部に移動する母指化術や足の指を微少血管手技によって移植する手術を行います。軽度のものでは母指の機能改善をはかるための腱移植術、骨移植術などを行います。

巨指症

手足の数本の指が巨大化してくるものです。一側性で、手では第2・3指に多く発生し、遺伝性は見られません。指の巨大が軽い場合は皮膚や脂肪組織を切除します。骨発育線を固定して発育の抑制をはかることもあります。指の巨大がひどい場合は、指の短縮、縮小術を行いますが、数回の手術でも健側と同じ大きさにするのが困難な場合があります。

裂手(足)症

手足の中央部分の指が欠損するまれな異常で、男子に多く、優生遺伝が認められる場合があります。定期的なものは、中指が欠損し、指間の切れ込みが深く、手が裂けたような外観です。裂手症は機能的には一般に良好ですが、外観上グロテスクな場合はできるだけ早く手術をして、裂隙を閉鎖します。

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